行燈旅館
〒111-0021
東京都台東区日本堤2-34-10
TEL:03-3873-8611
FAX:03-3873-8612
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Selected Architectural Designs 2005
Journal of Architecture and Building Science Architectural Institute of Japan

建築雑誌:増刊 作品選集  日本建築学会

行燈旅館
東京都台東区日本堤2丁目34番10号
入江正之 池村潤 入江高

”早稲田大学” DFI

行燈旅館は三ノ輪に建つ、外国から訪れるバックパッカー用の宿泊施設である。旅館名は江戸時代の有明行燈に由来する。それは、オーナーの収集された日本的な骨董お数々の中での愛用の一品であり、日本を訪れる外国の人々に日本的な情緒を味わってもらうというオーナーの夢をかなえる品々のひとつであった。それゆえ、流暢な英会話の音声が響き合う背景としての和風の世界をどのように作り出すかがテーマであった。
 施設は鉄骨造五階建てで、4,5階はオーナーの住居と宿泊者のためのジャグジー風呂とバッゲージルームがある。設計を依頼され、鉄骨造でどのように和風をイメージさせるかと考えたとき、行燈が浮かんだ。旅行者が滞在して、部屋に光をともすという行為を外部に表出させる仕掛け、その一連の行為が光の効果として外ににじみ出るように心掛けた。その和の雰囲気をDPGと金属の水平ルーバーやパンチング、およびパネルの素材の組み合わせで構成した。内部は対比的に、古民家の黒光りする木部の質感に馴染むように光量を絞り、光源を床面近くに限って、闇の中にローソクの光りがボーっとともって、ゆっくりとそれぞれの面や素材に伝わって、その質感が日本的な空間を微かに浮かび上がらせることを願った。使用した素材は安価で、どこでも使われてるものばかりである。それらをいくつかを組み合わせ、重層させ、さらに磨きを加えて塗る。珪カル板ペイント塗りの仕上げが、鈍い光を伴った菱形綾織りの絣の質感に変わる。廊下の壁面がそれである。宿泊室入口部の黒皮の鉄部をえぐるステンレスヘアラインのストライク、壁紙と木部の見切りのアルミアングルやフラ?ットバーの組み合わせ、アクリル、和紙とラスを組み合わせた落とし掛けなどもそのような姿勢からであり、鉄骨のスケルトンを含む外部のさまざまな仕上げ方も一連の行為である。一階はフロント、ロビーに当て、町屋風に土間にちょっとした水回りと木床の居間を付設した雰囲気の中で、語らいながら朝食が取れるようになっている。外国人宿泊者と交わり、賄いをするオーナーの周りに明るいコミュニティーの場が生まれ、この旅館が海外との交流の生き生きした窓口のひとつとしての役割を果たすことを願っている。

選評:東 利恵

三ノ輪、日本堤という昔ながらの作業場や店と住宅が一体になったしもた屋にコンクリートの建物が混在する町中で、ガラス・スクリーンのファザードが美しい建物である。
 海外旅行者の東京の行動拠点としての機能が満足されればそれ以上については省略してもよいと割り切ったバックパッカーのための宿泊施設である。一室7の部屋は旅館業法ぎりぎりの大きさであり、水回りも最低限の広さや数量に割り切って設計されている。
 しかし、最小限の空間でありながら、細やかな配慮でコントロールされたディテールは荒くなりがちな素材を繊細なデザインに変え、低い位置におかれた照明や天井面の間接照明が日本的な空間表現に貢献している。シンプルでありながら、実は細やかに計算されたデザインで、日本の宿としての新しい方向を提案している作品である。


Irie Masayuki建築家・早稲田大学教授 入江正之

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行燈旅館のデザインコンセプト

1. 都市ホテルの現代的在り様から

行燈旅館は三ノ輪に建つ、外国から訪れるバックパッカー用の宿泊施設である。三ノ輪や千住界隈は以前から定宿のない労務者たちの簡易宿所が多くあった所で、オーナーの帰山博之、敏子夫妻も先代から引き継いでその種の施設を経営されていたが、時代の移り変わりに敏感に対応された。
  一つはこの場所の歴史的、地理的変容からの対応である。三ノ輪は地下鉄日比谷線の一つの駅となり、この鉄道ルートで東京の最新の都市スペースである六本木、麻布、広尾と連結し、また上野、浅草、とのつながりで下町情緒を味わうことが出来る。更に距離を延ばせば、日光、そして京都、奈良と日本の近世から古代へと遡って日本人の心性に触れることが出来るのである。
  もう一つはメディアからの対応である。現在の情報メディアのドラスティックな変革によって、インターネットを通してこの場所は緊密なネットワークをもつ世界におけるひとつの記号のような、量的な広がりを必要としない場に変化する。外国からの旅行者は低料金で、自分の身体とバッゲージをおける最小の空間を拠点としながら、多様な欲求の展開としての最大の空間を手にすることが出来るという訳である。オーナーたちの慧眼によるものである。かくして旅館は一室2人で8,190円である。 交通・情報・設備インフラを装備したナノスケール的場こそ、都市の現代的宿泊施設の先端的在り様であろう。

2. 現代和風デザインから

施設は鉄骨増5階建てで、1階から3階までが旅館機能であり、4,5階はオーナー住居と宿泊者のためのジャクジー風呂とバッゲージルームがある。鉄骨造でどのように和風をイメージさせるかと考えたとき、行燈が浮かんだ。旅行者が滞在し、部屋に光を灯すという行為を外部に表出させる仕掛け、その一連の行為が光の効果として外に滲み出るように心掛けた。
  障子や木製格子のような和の雰囲気を、半透明のDPGと金属の水平ルーバーやパンチング、およびパネルの素材の組み合わせで構成した。内部は対比的に、古民家の黒光りする木部の質感に馴染むように光量を絞り、光源を床面近くに限って、闇の中にローソクの光がボーっと灯って、ゆっくりとそれぞれの面や素材に伝って、その質感が日本的な空間をかすかに浮かび上がらせることを願った。出回っているいくつか組み合わせ、重層させ、更に磨きを加えて塗る。珪カル板ペイント塗りの仕上げが、鈍い光を伴った菱形綾織りの絣の質感に変わる。廊下の壁面がそれである。宿泊室入り口部の黒皮の鉄部を抉るステンレスヘアラインのストライク、壁紙と木部の見切りのアルミアングルやフラットバーの組み合わせ、アクリル、和紙とラスを組み合わせた落とし掛けなどもそのような姿勢からであり、鉄骨のスケルトンを包む外部のさまざまな仕上げ方も一連の行為である。

 1階はフロント、ロビーに当て、町屋風に土間にちょっとした水回りと木床の居間を付設した雰囲気の中で、語らいながら朝食が取れるようになっている。外国人宿泊客と交わり、賄をするオーナーの周りに明るいコミュニティーの場が生まれ、この旅館が海外との交流の生き生きとした窓口の一つとしての役割を果たすことを願っている。